候補地選定 / 定量比較
5つの指標で考える
放デイ候補地の定量比較
放課後等デイサービスの候補地を3〜5件並べて 「ここが感触いい」「あちらは家賃が安い」と直感で順位を付けてしまう判断は、 開設後の集客と稼働率にそのまま跳ね返ります。 候補地は数字と地図で並列比較するのが基本です。 この記事では、競合密度・送迎15分圏・学校分布・児童人口・物件条件という 5つの指標で候補地を定量化し、判断する手順を整理します。
この記事で見ること
- なぜ候補地は「主観」で決めてはいけないのか
- 候補地比較の5指標:何を・なぜ見るのか
- 指標①競合密度:件数・規模・タイプを分けて測る
- 指標②送迎15分圏:到達エリアを道路ベースで描く
- 指標③学校分布:ルート設計の自由度を地図で確認する
- 指標④児童人口:半径2km圏の需要ベースラインを押さえる
- 指標⑤物件条件:面積・家賃・駐車場をセットで見る
- 5指標スコアシートの作り方
- 福祉エリアマップで実際にどう見るか
1. なぜ候補地は「主観」で決めてはいけないのか
放課後等デイサービスの候補地検討は、 現地視察・物件チラシ・地元の口コミから始まることが多い領域です。 現地に行ったとき「明るい雰囲気だった」「人通りがあった」といった印象は 重要な情報ですが、印象は時刻や曜日で揺れます。 午前中に空いて見えた通りも、夕方は学校帰りの動線が一気に増えることがあります。
一方で、開設後に毎月跳ね返ってくるのは 「半径◯km以内に何人の児童がいて、何件の事業所が同じ層を取り合っているか」 という構造的な数字です。 視察の印象と、構造の数字は、別レイヤーで見る必要があります。 視察は印象、判断は数字、というレイヤー分けを最初に決めておくだけで、 候補地比較の議論は驚くほど整理されます。
2. 候補地比較の5指標:何を・なぜ見るのか
候補地を定量比較するための指標は、次の5つです。 それぞれが異なる「問い」に答えるため、どれかひとつで済ませることはできません。
- 競合密度:この候補地の周辺で、すでに何枠の「利用者席」が埋まっているか
- 送迎15分圏:自社の送迎車が15分以内に到達できる住宅・学校エリアはどこか
- 学校分布:送迎15分圏の中に何校・何人の小学生がいて、どんな動線を作れるか
- 児童人口:半径2km圏内に今後の需要ベースとなる就学前・就学期の児童が何人いるか
- 物件条件:面積・家賃・駐車場が事業計画上の収益ラインに合うか
この5指標を候補地ごとに揃えることで、 「感触がいい」ではなく「数字でどうか」という軸で議論できるようになります。
3. 指標①競合密度:件数・規模・タイプを分けて測る
競合密度は「半径2km以内に何件の放デイがあるか」だけを見ると判断を誤ります。 同じ件数でも、規模・タイプの内訳によって、競合の意味は大きく違います。 最低限、次の3層に分けて数えるのが現実的です。
件数:絶対数のベースライン
まず、候補地から半径2km圏内に何件の放デイ・児発があるかを数えます。 自治体の指定事業所一覧をベースに、住所をジオコーディングして 地図に落とすのが基本動作です。区市町村単位の総数だけ見ても、 候補地の周りに何件あるかは分かりません。
規模:定員と職員数で「胃袋の大きさ」を測る
同じ「1件」でも、定員10名の事業所と定員30名の事業所では、 地域から吸い上げる児童数が大きく違います。 指定事業所一覧には定員が記載されているので、 件数だけでなく 合計定員 を地域単位で集計しておくと、 候補地の周辺で実際にどのくらいの児童が既に通所しているかの目安になります。
タイプ:同質競合か、補完関係か
周辺事業所が、自社が想定するターゲット層と 重なっているかどうかも分けて見ます。
- 重症心身障害児を主に受けている事業所
- 個別療育・小集団中心の事業所
- 運動・学習・SST中心の事業所
- レスパイト・預かり中心の事業所
周辺が同質競合だらけの地域は、件数が少なくても消耗戦になりやすく、 逆にタイプがばらけていれば件数が多くても棲み分けの余地があります。 数字と一緒に「何の事業所か」までセットで見るのがポイントです。
4. 指標②送迎15分圏:到達エリアを道路ベースで描く
放デイ・児発の利用者は、施設の最寄り駅から通うのではなく、 家か学校から送迎で通います。だから候補地から 車で15分以内に到達できる範囲(送迎15分圏)の中に、 実際にどのくらいの利用候補児童がいるかが、 稼働率の上限を決める最重要な数字になります。
送迎15分圏は、直線距離で半径◯kmと描くより、 道路ネットワーク上の所要時間で描いた方が現実に近い形になります。 幹線道路の混雑時間帯、踏切、坂道、一方通行などが反映されるからです。
描いた送迎15分圏の中に、次の3つを重ねて見ます。
- 住宅エリア:マンション・戸建てが集積する住所範囲
- 小学校:学校発の送迎ルートに乗せやすい学校の位置と児童数
- 未就学児が多い保育園・幼稚園:児発の場合の送迎元
5. 指標③学校分布:ルート設計の自由度を地図で確認する
送迎15分圏が確認できたら、その圏内に小学校がどう分布しているかを 独立した指標として確認します。 学校分布は「何校・何人いるか」だけでなく、 「どんな動線でルートを引けるか」に直結するため、 送迎15分圏と別に整理する価値があります。
各校の児童数:需要の粒度を測る
自治体公表の「学校別児童・生徒数」を使い、 送迎15分圏内の小学校ごとの在籍児童数を確認します。 圏内に小学校が3校あって各校400人在籍していれば、 送迎ルート設計の自由度は高くなります。 逆に、15分圏内の小学校児童数を合計しても少ない地域は、 そもそも対象人口の上限が見えてしまいます。
ルート設計の自由度:複数ルートを引けるか
学校の位置と数によって、送迎ルートの組み方が変わります。 同じ候補地でも、学校が南北に散らばっている場合と 一方向に集中している場合では、欠員対応のしやすさが大きく異なります。 地図上で「何通りのルートが引けるか」を視覚的に確認しておくことが重要です。
動線の安全性:通学路と送迎路が交差する箇所を確認
学校から事業所に向かう道に、 踏切・大型交差点・歩道のない区間が含まれていないかも確認します。 送迎車の安全性は保護者が最も気にするポイントであり、 ルート上のリスク箇所は事前に地図で洗い出しておくのが基本です。
6. 指標④児童人口:半径2km圏の需要ベースラインを押さえる
競合密度と送迎15分圏は「どれだけ取り合っているか・届けられるか」を測りますが、 そもそもの需要総量を確認するのが児童人口の指標です。
候補地から半径2km圏内の小学生・未就学児の人口を、 政府統計・自治体統計から取得します。 ただし自治体単位の総数ではなく、「候補地を中心とした半径2km」で絞ることが重要で、 地図ベースの集計が必要になります。
- 小学生(6〜12歳)の人口:放デイの主な対象層
- 未就学児(3〜5歳)の人口:児発・放デイ合算で検討する場合の対象層
- 障害福祉の推計値:自治体の障害者計画から受給者証発行実績を参照
この数字が少ない地域は、競合が少なくても市場規模そのものが小さい可能性があります。 競合密度と需要人口の両方を同時に見ることで、 「穴場なのか、市場がないのか」を判断できます。
7. 指標⑤物件条件:面積・家賃・駐車場をセットで見る
市場環境の指標が揃ったら、最後に物件条件を確認します。 物件は物件側の情報なので比較的取りやすい数字ですが、 単体で見るのではなく、事業計画の収益ラインと照らし合わせて見るのが基本です。
- 専有面積:定員に応じた必要面積を満たすか(自治体ごとの指定基準を確認)
- 室内構成:療育スペース・個室・スタッフルーム・トイレの配置
- 月額家賃:定員フル稼働時の売上に対して家賃比率が適正か
- 送迎車の停車スペース:前面道路の幅・近隣駐車場の確保可否
- 用途地域・建築基準:自治体の指定基準に物件が適合するか
物件条件は他の4指標が良くても、ここで詰まると事業開始できません。 逆に物件条件だけ良くても、市場環境が伴わなければ稼働率が上がりません。 5指標はすべて並列に確認するのが原則です。
8. 5指標スコアシートの作り方
ここまでで集めた数字を、候補地ごとに1行のスコアシートに落とします。 縦に候補地、横に5指標群を並べた1枚の表です。 列の例は次の通りです。
- 候補地名・住所
- 【競合密度】半径2km内 競合事業所数(放デイ / 児発)・合計定員・タイプ
- 【送迎15分圏】到達エリア概況・主要幹線の混雑時間帯
- 【学校分布】送迎15分圏内 小学校数 / 合計児童数・ルート引ける方向数
- 【児童人口】半径2km内 小学生人口 / 未就学児人口
- 【物件条件】専有面積 / 月額家賃 / 駐車場台数 / 用途地域適合
- 洪水・土砂のハザード該当の有無
- 視察での主観メモ(明るさ・人通り・周辺住民の雰囲気など)
最後の列で初めて「主観メモ」を入れます。 ここまでが定量で並んでいると、主観メモは決定打ではなく 「数字で似た2つのうち、どちらか」と問いの形が変わります。 これが、判断の品質を上げる構造です。
9. 福祉エリアマップで実際にどう見るか
福祉エリアマップは、候補地住所を入れるだけで 半径2km内の競合密度、送迎15分圏内の児童数、 学校・ハザードの重ねを地図上で同時に見られるサービスです。 自治体公表の指定事業所一覧、児童・生徒数、ハザードマップ、 国土地理院の地図情報をベースに集計しています。
複数候補地を並べて1枚のレポートにまとめる 候補地比較レポート のひな形も用意しています。スコアシートの作成を内製するか、 外部の比較レポートに任せるかは、開設までのスケジュールと 自社のリサーチ体制で決まります。
まず1件、地図で見てみたい場合は 分析マップのデモから 住所を入れて確認できます。