児童発達支援 / 立地分析

児童発達支援の立地分析
需要供給ギャップを地図で可視化する方法

公開日: 2026-05-01 対象: 児童発達支援の新規開設・多店舗展開を検討する事業者 テーマ: 立地分析 / 需要予測 / 供給分析

児童発達支援は、自治体ごとに需要と供給のバランスが大きく異なります。 同じ都道府県の中でも、未就学児が多くて事業所が少ない地域もあれば、 逆に事業所が密集していて稼働率が頭打ちの地域もあります。 自治体単位の平均値だけでは、 こうした地域差はほとんど見えません。 この記事では、児童発達支援の立地を需要側と供給側の二層で見て、 ギャップを地図に重ねて可視化する手順を整理します。

この記事で見ること

  1. なぜ児発は「自治体平均」で判断してはいけないのか
  2. 需要側の指標:未就学児人口・受給者証発行数・通園距離
  3. 供給側の指標:事業所数・定員・タイプ・空き枠
  4. 需要供給ギャップを地図で可視化する手順
  5. 「空白エリア」と「過密エリア」の見極め方
  6. ギャップが見つかったらやること(一次裏取り)
  7. 福祉エリアマップで実際にどう見るか

1. なぜ児発は「自治体平均」で判断してはいけないのか

児童発達支援は、原則として未就学児が日常的に通う通所支援です。 通園範囲は放課後等デイサービスより短く、 家庭の生活圏(家・園・通院先)の中に入っていることが利用継続の条件になります。 だからこそ、自治体全体の平均値では地域の現実が見えません。

たとえば人口25万人の自治体で「児発が15事業所ある」という数字を見ると、 十分な供給があるように見えます。ところが地図で位置を重ねると、 中心部に12事業所が集中し、周辺部には2〜3事業所しかない、 というケースは珍しくありません。中心部から3km離れた住宅地に住む家庭にとっては、 「事業所はたくさんあるが、自分のところからは通えない」という状況になります。

児発の需要は家庭から通える範囲に閉じている。 自治体平均ではなく、半径2〜3kmのメッシュで見ないと、 実需給バランスは見えません。

2. 需要側の指標:未就学児人口・受給者証発行数・通園距離

需要側は、最低限次の3つを見ます。どれも自治体公表データから取得できますが、 地理的な分布まで見るには地図に落とす作業が必要です。

未就学児人口(0〜5歳)

国勢調査・住民基本台帳の年齢別人口から、町丁字単位で 未就学児の分布を取得できます。 児発の主たる利用層は2〜5歳児なので、年齢を絞って 地図上にメッシュで描くのが基本です。 住宅団地、再開発エリアの新築マンション群など、 子育て世帯が集中する場所が一目で分かります。

通所受給者証の発行数

自治体によっては、通所受給者証の発行数(児発・放デイ)を 年次の事業計画で公表しています。 発行数は児発の利用児童の母集団に最も近い数字です。 自治体内の総数だけでなく、年次推移を見て増減傾向も把握しておくと、 需要トレンドの見立てに使えます。

通園距離の現実

児発は親が連れて行くことが多く、放デイより通園距離が短い傾向があります。 自家用車で15分、徒歩・自転車で10〜15分が現実的な上限になりやすい。 つまり需要の中心地はであり、 そこから半径2〜3kmが児発の実際の商圏になります。

3. 供給側の指標:事業所数・定員・タイプ・空き枠

供給側は、事業所数を数えるだけでは足りません。 需要との比較で意味を持つのは、定員と利用枠の使われ方です。

事業所数と定員(合計胃袋)

自治体公表の指定事業所一覧から、児発事業所の住所と定員を取得し、 地図に落とします。 地域単位の「合計定員」を出すと、 その地域が1日に何人の児童を受け入れられるかが見えます。 需要側の未就学児人口や受給者証発行数と並べて初めて、 需給バランスの目安になります。

タイプ別の供給

事業所のタイプは需要側の細分とも紐づきます。

  • 個別療育中心(言語聴覚士・作業療法士在籍)
  • 小集団・SST中心
  • 運動・感覚統合中心
  • 母子分離型/母子通所型
  • 医療的ケア児対応

タイプ別に地図を塗り分けると、 「同じエリアに似たタイプばかり集まっている」「特定タイプは空白」 といったパターンが浮かび上がります。 需要側の特性(医療的ケア児の多い地域など)と重ねると、 埋まっていない需要が見えます。

空き枠の見立て

空き枠は公表データだけでは正確に出ません。 一次情報として、自治体の指定事業所一覧の更新頻度(新規開設・廃止)と、 自治体の児童発達支援センターへのヒアリング、 保護者団体や相談支援事業所からの「探しても入れない」という声を 補助情報として組み合わせます。

4. 需要供給ギャップを地図で可視化する手順

需要側と供給側の数字を、同じ地図の上に重ねて見るのがギャップ分析の核です。 手順は次の通りです。

  1. 町丁字または500mメッシュ単位で、未就学児人口を色の濃淡で塗る
  2. 同じ地図に既存児発事業所をプロット(合計定員でドットの大きさを変えると分かりやすい)
  3. 各事業所から半径2kmの円(または通園15分圏)を描き、カバレッジを可視化
  4. カバーされていない高需要エリア(色が濃いのに円から外れている地域)を抽出
  5. そのエリアにタイプ別の需要(医療的ケア児・SST特化など)が偏っていないかを確認

この5ステップが整うと、「どこに、どのタイプの児発を出せば、 需給ギャップが埋まるか」という問いに、地図上の根拠を持って答えられます。

5. 「空白エリア」と「過密エリア」の見極め方

地図で需要と供給を重ねると、典型的に2つのパターンが現れます。 それぞれ取るべき判断が違います。

空白エリア:供給が需要に追いついていない

色が濃い(未就学児が多い)のに、円のカバレッジから外れている地域です。 この場合、新規開設の余地は明確に見えますが、 供給が空白な理由(建物用件が満たせない、地価が高すぎる、自治体の指定方針) まで一次調査しないと、開設後に同じ理由でつまずく可能性があります。

過密エリア:供給は揃っているが、稼働率は低い

複数の円が重なり、合計定員が需要を超えているように見える地域です。 ここで開設すると同質競合になり、稼働率が伸びにくい構造になります。 ただし、タイプ別に見ると過密の中にも空白がある場合があり、 「医療的ケア児対応」「個別療育」など特化型でなら入る余地が 残っているケースもあります。

6. ギャップが見つかったらやること(一次裏取り)

地図でギャップが見えたら、すぐに物件を探すのではなく、 次の3つの一次裏取りを必ず行います。

  • 自治体の障害福祉課・児童家庭課に、新規指定の方針と動向を確認
  • 地域の相談支援事業所に、保護者の問い合わせ傾向と「入れない」事例の有無を確認
  • 保育園・幼稚園・地域子育て支援センターに、療育につながる前段の相談状況を確認

地図の数字が示すギャップは「構造としての需要余地」です。 それが「実際に通う家庭の意向」として現れるかは、現場の声でしか分かりません。 一次裏取りで需要が確認できて初めて、候補地探しに進む順序になります。

7. 福祉エリアマップで実際にどう見るか

福祉エリアマップは、児童発達支援の立地分析に必要な 需要側(年齢別人口・受給者証発行数)と 供給側(指定事業所・定員・タイプ)の情報を、 同じ地図上に重ねて見るためのサービスです。 自治体公表の指定事業所一覧、人口統計、ハザードマップなどを 下敷きに集計しています。

需要供給ギャップを1枚にまとめた 候補地比較レポート のひな形では、需要メッシュ・供給円・空白エリア・タイプ別重ねを 標準フォーマットで出力できます。

まずは1自治体・1商圏で見てみたい場合は、 分析マップのデモから 地名や住所を入れて確認できます。